ごめん
装画を描かせていただいた詩集より、ご紹介します。
新川和江詩集『いつもどこかで』より
「ごめん」
えんぴつは折れるとき
ごめん!といって
折れます
でも
だまってプツンと
折れてしまうこともあるよ
ぼくが
いやいや べんきょうしたり
らんぼうに らくがきなんか
しているときです
はっときづいて
こんどは ぼくが
ごめん といって
けずりなおすの
小刀で ていねいにけずると
木の いいにおいがして
森にきたような
しーんとした 気もちになります
きこえるよね 風のおとや
小鳥のこえが……..
と ぼくは
えんぴつに 話しかけます
えんぴつをけずっているのは、15歳のNOE
遊の「木の時間」の先生に作っていただいた
大切な小刀です。
新川和江詩集『いつもどこかで』より
「えんぴつの芯」
おじいちゃんから
いただいた小刀で
はじめて えんぴつをけずりながら
思ったこと
外に出るなり
粉になって
すてられてしまう
芯も あるのね
文字になって
だれに読まれることもなく
絵になって
ほめられることもなく
でも
だいじなお仕事をする
まんまんなかの
芯をまもってきたのだから
くろい粉は まんぞくして
すてられていくのでしょうね
けずりきを使わずに
小刀で
いっぽんいっぽん ていねいに
えんぴつをけずりながら
思ったこと